突然すみませんっ、今って、令和何年ですかっ?
何でこんなことを伺ったかと申しますと、令和4年度を締めくくった記事を「令和5年度の総決算」という題で公開していたからです。秋くらいに気づいて修正したつもりだったのですが、これを書いている今(R6年4月)見たら治っていませんでした。申し訳ありません。
気が早すぎると思ったのですが、同時期に私が書いたかもしれない別の文書で日付が1年前になっていたことにも先日気付きました。もしかしたら2023年の春は色々な年が並行して存在していたのかもしれません。
というわけで正真正銘の令和5年度の総決算をここでやっていきたいと思います。
氷礫や新生ずんだ文学の創刊など組織の中での活動が多かった令和4年度と比べて、令和5年度は組織的な活動が少なかった印象です。そんな令和5年度の厠谷の執筆活動を記憶の限り時系列で追っていきたいと思います。
電脳興信所のささいな事件簿(R5.07.10~ カクヨムにて順次公開)
サイバーパンクのつもりで書いた作品です。やる気のない私立探偵阪本紅未とその助手ジムのコンビが大企業の陰謀渦巻く電脳世界を飛び回るみたいな話です。小説家になろうにしか投稿していないどころか、3年間更新が止まっている「油の海」という作品の数年後という設定ですが、そんなこと皆さんには関係ない話ですよね。
これも続編を書けるように終わらせましたが、未だに終わらせたことの満足感に浸っていて、続きは一行も書いていません。
魔女の短編集(R5.10.28-29 東北大学祭にて500円で販売)
東北大学で活動している文芸サークルプラネッツが部誌として発行したアンソロジーです。部員による「魔女」をテーマに執筆した短編が5編収録されています。
この部誌は、おそらく今後もいろいろなところで販売されていくと思います。遠方からご所望の場合はもしかしたら通販ができるかもしれないので、とりあえずご一報いただけると幸いです。
「待ち人」
テーマである「魔女」を魔性の女と捉えて書いた作品です。ある寂れた集落に残された「御休塔」に関する歴史の回想を通して、突如表舞台を去った伝説のアイドル「阿原純佳」に惑わされた男たちを描いた作品です。
椎名誠の「高い木の男」(『銀天公社の偽月』所収)が好きで、独り語りの形式を取りました。
Ducks sing, sharks sing too.(R5.10.28-29 東北大学祭にて300円で販売)
大学祭向けに発行した厠谷の単著です。「ドッキリ」、「悼飯」、「超未来会議」、「格子越しの名探偵」、「らっきょう」の5作の短編が収録されています。すべて世にも奇妙な物語のようなテイストの、変な世界を舞台とした作品です。
口に何かを入れるという行為が、外界のものを自分の内側に入れるという重要な行為であるにも関わらず、比較的簡単にできてしまうため、私たちはその行為に対してこだわりやマナーなどの形で精神的に縛っているような気がします。その物理的ハードルと精神的ハードルのギャップが宗教に似ていて興味深く感じていました。なので食事にまつわるすこし不思議な世界の話がいくつか載っています。
20冊くらいしか用意していませんでしたので、学祭の2日間で売り切ることができました。手に取っていただいた方には改めてお礼申し上げます。在庫はもうないので、再販は未定です。
「ヨシエさんの写真」に関する文書群 (R5.12.16~ カクヨムにて順次公開)
「L村の怪異」以来約2年半ぶりに書いたモキュメンタリーホラー作品です。ヨシエさんの写真が関わっていると思われる事件の記録を集めた物語です。詳しく言うとネタバレになってしまいそうなので、まずは読んでみてください。
以前カクヨムに投稿した「流された神の島」のあとがき的近況ノートで、生意気にも「流された神の島」の続編を書くと申しておりますが、この作品はそこで述べていた続編ではありません。また作中の一部の固有名詞が「L村の怪異」と共通しておりますが、ストーリー的なつながりはありません。同じ世界で起きただけの話もしくはスターシステムという感じです。新しく名前を考えるのが面倒だったから使いまわしただけなので、2作品間の詳しい設定はまだ決めていません。
この作品はR6年2月にカクヨム公式の特集ページで取り上げていただきました。そのおかげで思いがけずたくさんの方々に読んでいただいて有難い限りです。文字数に比べて話数が多いのでPV数がかさましされているだけなのかもしれませんが……。
どうであれ、ここまで読まれたことはなかったので、毎日狂喜乱舞しております。特にうれしかったのは、2年ほど前に書いた同じ形式の拙作「L村の怪異」を評価してくださった方が、本作をより高く評価してくださったことです。
R3年春頃にモキュメンタリーホラーのつもりで投稿した「L村の怪異」は当時拙作の中では評判がよく、調子に乗ってカクヨムでモキュメンタリーホラーの自主企画を作ったりもしました。ただそのころはモキュメンタリー作品が全体的に少なかったため、あまり作品が集まらず、企画は終了する前に中止しました。
最近はカクヨムに、『近畿地方のある地域について』をはじめとしてモキュメンタリーホラーがたくさん投稿されるようになっている印象があります。あの頃と比べて、今はモキュメンタリーという形式に燦燦と日の目を浴びているようで、モキュメンタリー好きとしては嬉しい限りです。
個人的には雑誌の記事やウェブサイトの文章を軸にして進められる作品はモキュメンタリーに該当すると思っています。しかしそういう形式を取っている作品でもタグにモキュメンタリーを入れていない場合も結構あるっぽい感じです。タグは作者の方の勝手ですし、モキュメンタリーがタグに入れるまでもなく一般的になっていると捉えると読者として嬉しいですが、探すのに手間取るのであわよくばタグに「モキュメンタリー」もしくは「フェイクドキュメンタリー」と入れて頂けると読者としてはさらに嬉しいかなと思っています。
不可解なタクシー転落事故(R5.11.25~ YouTubeにて限定公開)
『「ヨシエさん」の写真に関する文書群』に関連して作ってみました。未解決事件のゆっくり解説という体をとったモキュメンタリー映像、いうなれば「もっくり解説動画」です。この動画を偶然おすすめされて見た方に本当だと思われても困るので限定公開にしています。ジャンプスケアはありません。『「ヨシエさん」の写真に関する文書群』を読んだ方も読んでいない方もよければ見てみてください。これを見て謎が解明されるというわけではないので、未視聴の方もご安心ください。
新生 ずんだ文学 vol.2 (R6.04.04~ Boothにて450円で販売)
東北大学で活動する3つの文芸系サークルによる合同誌です。「モノクロ」がテーマの作品が5作と自由創作が3作収録されているアンソロジーとなっています。いずれ紙版を販売する計画もありますので、決まり次第お知らせするかもしれません。
vol.2は編集担当の香取さんのおかげで挿絵がついて、前号と比べて豪華な誌面になりました。そこもお楽しみください。
厠谷は今回、図らずも編集長的な立ち位置についてしまいました。その仕事がうまくできていたとは到底思えませんが、wordで誌面を作るという金があれば無駄になる技術を継承できたので、大きな目標を一つ達成できたということにします。
「三角形」
「モノクロ」のテーマ創作です。△にまつわる変なマナーが存在する世界の会社員を描きました。昨年発行したvol.1に載せた作品も会社員を主人公にした少し不思議な話です。私はずんだ文学に会社員が主人公の作品を書かなければいけない呪いにかかっているのでしょうかね。
最後に
なんだかんだで昨年度も色々書けていた1年間だったと思います。所属先での創作とカクヨムの投稿が両立できたので充足した1年だと言えるでしょう。特に単著を学祭で売れたのはとてもいい経験になりました。
振り返ってみて創作活動が秋以降に偏っているように見えることに驚いています。R5年度の後半は厠谷史上記録的に忙しく、創作に割く時間があまりなかった印象です。もしかしたらこの時期に私に降りかかっていたタスクは、難易度がべらぼうに高かったというよりも、その性質が厠谷の性分と悲劇的に不一致していたために、忙しいと錯覚していただけかもしれません。もしくは忙しさがバネになった創作にも集中できたのでしょうか。
何はともあれ、悪くない1年でした。今年度もいろいろ書いていけたらと思います。「『ヨシエさんの写真』に関する文書群」に公式という上位存在による超常的なブーストが掛かってしまったので、普段の厠谷に見合わぬ注目を浴びてしまいました。嬉しいことには変わりはないし年度後半の追いこまれからの回復に大いに貢献したことも事実です。
しかし、今後しばらくはこれ以上の注目を浴びることがないでしょう。そう思うと少し寂しいです。だから今年度は特に、読者からの反応ではなく創作自体を楽しむことを目的にすることを忘れないで、書きたい作品を書いていけたらいいなと思います。
ここまで読んでいただいた方は本当にありがとうございます。これからの1年間もまた厠谷をよろしくお願いします。