組織として外へ向けた創作活動に関わる機会が多かった年でしたので、ここに令和4年度のうちに関わった活動をまとめました。
タイトルで銘を打っておきながら、日の目を浴びたのが令和5年度初頭のものあります。厠谷が関わったのが4年度内だったという認識でご勘弁ください。
また、ネット上で公開しているものに関しては、名前をクリックすれば閲覧ページなどへ飛べるようになっていますので、ぜひご覧ください。
氷礫 Vol.01(R4.07.01~ 無料公開)
東北大学SF・推理研究会という団体が発行する機関誌です。同団体が発行していた「九龍」がコロナ禍で事実上の休刊となり、機関誌制作に関わっていた世代も残っていなかったことから、装いを新たに「氷礫」を刊行しました。
「戦略営業部第四課」
創作を始めた頃からサイバーパンク作品を書きたくて、これもその欲求の結晶なのですが、サイバーパンクで定番の暗い雰囲気を廃した、突き抜けて明るいトーンの物語です。
間が抜けているけれど憎めない人柄で周りから愛されている人が、実はやり手だったという物語は国内だけでも枚挙にいとまがありませんが、この作品もそういうパターンの話です。オフィスでのわちゃわちゃは、映画「釣りバカ日誌」シリーズでの西田敏行と谷啓のやり取りをイメージして書きました。
「もののけのふるさと」
こちらは打って変わって、技術の驚異的な発展が目立ちにくい未来を舞台にしたミステリ風の作品です。コロナ禍が収束してしばらく経った日本で、子供たちが噂する「人魚先生」という妖怪に迫るという話です。コロナ禍が未来の日本の社会にどのような影響を及ぼすかを妄想して書きました。人魚先生は、執筆当時の現実世界における「口裂け女」とか「くねくね」くらいに噂されているという設定です。
SF・推理研でやっていた「コロナ禍」のテーマ創作で提出した作品です。
氷礫 Vol.02(R4.10.28~ 発売)
東北大学SF・推理研の機関誌の第2号で、令和5年度の東北大学祭に合わせて発行しました。同団体のOBであり、推理作家として活躍されている白井智之さんのインタビューおよび単行本全レビューが掲載されています。小説家の中では身近な方の、作家デビュー前夜のお話は、執筆のカンフル剤となりました。
この号では、東北大学漫画研究会さんに挿絵をつけて頂いております。
令和5年4月時点で、学祭で販売したのみであり、電子書籍の販売は行っていません。
令和7年5月、Boothにて電子版の販売が開始されました。これまでも学祭や即売会等で販売してきましたが、地理的な事情などで足を運べない方なども、コチラお買い求めいただけます。
「晴れてる間にさようなら」
肥大したアジアの企業に支配されつつある日本の街で、エンジニアとして働く女が、彼女と恋人とその旦那が殺された事件の謎を追うという話です。
東北大SF研の古い機関誌に掲載されていた『ニューロマンサー』に関する記事内で、「日本人がサイバーパンクを書くなら、ギブスンをそのまま真似てヒタチを出すのではなく、金星や現代などを出すべきだ」といった旨の文章を読んで、こんな世界観の作品にしました。作品の舞台の街は、日本以外のアジア企業によって造られた、煌びやかだが雑然としている繁華街がすぐにできそうという理由で選びました。日本人が書くサイバーパンクを模索している厠谷としては結構気に入ってはいます。
作品のダークな雰囲気が表現されている挿絵は漫研のヘラ井さんに描いていただきました。自分の文章をイラストにする機会は滅多になく、私が造ったのキャラクターに命が吹き込まれたようで感動しました。
友人には『七つの会議』に似ていると言われましたが、私は読んだことがないので何とも言えません。
新生 ずんだ文学 vol.1(R5.04.07 公開)
東北大学には、文芸系サークルが3つもありましたが、それぞれがお互いのことを意識せず、完全に独立して活動していましたが、ある程度交流を持った方が、お互いをうまい具合に刺激して活動を活性化させるのではないかという考えの元で刊行された合同誌です。
頭に“新生”とついているのは、平成20年ころから東北大学の文芸系4サークルの合同誌“ずんだ文学”が刊行されていたからです。
「日向に蓋」
厠谷の中では原点回帰した世界観の作品だと思っています。
露出魔が裸にトレンチコートを羽織っているというステレオタイプが、令和の世の中で通じる自信はそこまでありません。
単に短いからかもしれませんが、厠谷の周りの人たちからは結構評判がいい作品です。今のところ無料公開していないのが惜しまれます。
宇宙フリーマガジン TELSTAR VOL.27(R5.04.12 公開)
インカレとして活動する宇宙広報団体であるTELSTARの発行するフリーマガジンです。知人が制作に携わっている関係で、東北大学SF研とのコラボ企画が実現し、その一環で拙著を掲載していただきました。
「遥か遠くの渚にて」
代打のお鉢が回ってきたので、TELSTARへ寄稿した作品です。月面基地で噂される都市伝説に関する1000字足らずの掌編です。
足を怪我した男が月面基地生まれの少女と出会い、月の“海”を見つけて……というストーリーの既視感には、書き上げてから気が付きました。この作品の元になったのは、別の媒体で発表しようと考えて組んでいたプロットで、そこでは主人公が足を怪我することも、少女の話からすぐに“海”を連想することもありませんでした。本来のプロットで書こうとしていた作品は、締め切りに間に合わずボツになってしまいました。